いつかみんな大丈夫じゃなくなる

 最初から大きな泥団子なんて作っちゃダメだと昔言われたのを思い出した。欠けた時に直すのがもっと大変になるんだよと。前々からあったものがなくなることは、とても大きな喪失や苦痛を伴うこと、その痛みについて口にすることもできずに笑って通すことにつながっている。全部、最初からダメだったってことかもしれない。

 

 「頑張ります」とバイト先で言うとき、本気でそう思ってる中でどこか「や、頑張るのはいいんですけど、なんかもう一旦死んでもいいっすか?」みたいな気持ちにもなる。とはいえ、本当に頑張ったことなんてない、実は。いつも適当でなあなあに生きてるから、ボロが出て、みんなが生き残るような当たり前の場所で野垂れ死ぬのだろうと思っている。

 大学生だから頑張るだけだよ、勉強が好きだ、でももう死んでしまいたい、「押しつぶされているという感覚を持っている時点で、もうダメなんだよ」とずっと脳裏から囁き声が聞こえる。なんでここにいるんだろう。なんのためにここまで生きてきたんだろう。

 

 一般的に大多数として生きてる人間は、毎晩こんなことを考えながら暗鬱とした救いようのない言葉をわざわざこんなふうにどこかに投げ込んだりするのだろうか。死ぬのが怖いのに死にたいと思い続ける馬鹿馬鹿しい日々が来ない人になりたい。自死しない理由が死ぬのが怖いなんて、なんて健康的でまともなんだろう。いっそ早くダメになりたい。本当にダメになったら、薬でも飲んで死ねばいいから。死ぬのが怖いなんて思わなくて済むんじゃないかと思っている。そもそも、10幾つを過ぎてからずっと、あまり長生きしたくなかった、子供を産む気もないし、そもそも誰かにとって大きな価値のある存在でもない、誰かの唯一でもない。もう20年近く生きたのだから、もう、この人生も何もかも、誰かのための継ぎ接ぎだとなんとなくわかって(実感して)いる。自分の未来が見えないこと、未来を見ないことをまるで悪いことのように言われて、悪化した部分もあるかもしれないけれど。

 美しい花じゃないから生き残ったのだと思いながら死ぬのは惨めだ、誰からも愛される資格のない状態にまで歩みを進めたこと、最初に得たものがあまりにも大きかったこと、なにもかもが見苦しさの理由になっている。

 

 いつかみんな大丈夫じゃなくなったらいいのに。そしたらちょっとだけでもこんなバケモノを殺さずにいようと思ってくれるかもしれない。誰かを傷つけた加害者を「遠い誰か」だと思ったことがない、自分に似た誰かだと思う。対岸のような顔をしているけれど、実はすぐ隣の人間なのだ。そうじゃないように装うために知識をつけて、社会一般の人間の一種に擬態して生きている。わたしはふつうのにんげんですよ、と読み上げるように。みんなそうやって生きてると思ってた。だからこんなに生きにくくて、もどかしくて苦しいのだと。もしそうじゃないならこんなに辛いのは自分のせいじゃないか。

 

 あの子みたいになりたかった、儚くて聡いあの子みたいに。笑って全てを乗り越えた顔をしてられるあの子に。そう思ってから、馬鹿馬鹿しいと思った。僕みたいな奴がたくさんいるなら、あの子みたいになれば誰かに関心をもらえるのではないかなんて。

 

 関心を愛だと思おうとすること、試し行動。抜け出せない疑心暗鬼とか、好きな歌手が誰かとか、君は私の手を握るのかどうかとか、そういうこと、全部本当はすごく気にしているのに、まるであっけらかんと笑うことが正しいみたいに思えて、根拠もないのに笑っている、

 

 自分がいちばんめに大丈夫じゃなくなっただけ、君もあの子もいつかみんな、大丈夫じゃなくなるはず、そう信じて生きてる。自分はどこも、おかしくなんてない。

なんもわかってなくていいよ

 そこそこに自己肯定ができる人間はすごいと思う。養育環境も親も良くて、自身もしっかりしてたんだね、とか思うし拍手したくなる。嫌味ゼロで。

 

 養育環境も親も、別に特別悪くはないけど、本人がオワコンみたいなもんだから、自分自身の価値を見出せないまま20年くらい生きてる。正しい自己認識ができないのに、他者と関係構築ができるわけがない、とか言わなくてもわかるよね?どう考えても自分自身にしか問題が見当たらないのに、必死で親や環境に責任を押し付けようとしている自分を俯瞰的にみて、はやく死んだらいいのにと思う。

 成績を取れないなら価値がないと思うのは、誰も信じられないからだし、教員は100%俺のことが嫌い。他人からの愛情は上辺でしかなくて、好意は少し連絡が途絶えれば消滅。いっそ誰かに無理やり病院に連れて行ってほしいし、本とCDに囲まれてあまり人と会わずに生きていたい。成績を重視せずに大学生活を送っている全ての人間を心から尊敬している。自分にはできないから。

 じゃあだから勉強してますか?と聞かれたら、そんなこともなくて、惰性の中で生きています。課題も出していないし、本の貸し出し期限を守ることもできない、勉強は好きなのに、頭が悪くなったのかなんなのかはわからないけれど、手につかなくて頭も回らない。ずっとモヤのかかった頭の中で無理やり物事を回している。憧れのあのひとは夢を追いかけながら勉強もしっかりしていたのにな、どうしてこんなにダメなんだろう。解決策を講じても、継続しないから何も変わらない。

 

 一般的に言う自傷行為をやめたのは、バイト先で半袖を着るからで、それ以上でもそれ以下でもない。爪噛みはやめられないし、ささくれを抜いて血が出るまで穿ることもある。最近は輪ゴムを腕で打つことでなんとなく気を紛らわせたりもしている。過食も酷いから気がついたら炊飯器の中にあったはずのお米がない。日曜日に昼過ぎまで寝て、なにもできないまま月曜日を迎える。コンクリの壁に腕を打ち付けたりもする。死んだ方がマシな生活。救いのある日々を送っているすべての人間が羨ましい。誰か殺してほしい。悔いもクソもないんだよ、なんかもうずっと疲れてる。本当に勉強したいのは、これじゃないのになと思いながら、それも必要なステップだからねと続けている。ボロが出てきたけれど。

 

「もっとゆっくり生きなさい」と社会学部の先生に言われた。ゆっくり生きれるほど余裕のある暮らしじゃないですよ。余裕がないの、ずっと不安で、手からこぼれ落ちるたくさんのものへの罪悪感や惜しさが、全部自分が頑張らなかったせいになるのが嫌だ。悲しい、こんなふうに生きたいわけじゃないのに。大学院に行きたいとずっと言っているけれど、本当は大学も大学院も向いてないし、就職も向いてないし、死ぬしかないなぁ。未来がないなぁ、死ぬなら誰かの為になる方法で死にたいなぁ、とばかり考えている。

 

 親に処方された睡眠を促す薬は、多量摂取しても死ねなさそうだった。バファリンを8錠飲んでダメになった日のことを思い出す。服薬自死は難しいのかもね、今のままじゃね。

 友達がいない、と言う言葉を許してほしい。信じたいし託したいのに、それが怖いんだよ。

 

 なんもわかってくれなくていいから、とりあえず手を繋いで、ハグしてくれたら助かる。他は全部、結局無理して勉強して、音楽聴いて、みみず腫れ作って乗り越えてヘラヘラするしかないんだから。

 

2:58だから許してほしいな。

とびきりの煌きを輪にして

 自分はどう生きても素晴らしくなんてなれないと知っていること、永遠にしがらみの中で自己嫌悪と他者羨望の音ばかり耳にして、美しいものを見た気になって生きていく。目の中にある色水が虹を見えないようにしている。空の色も海の色も、君の虹彩の色も知らないでいる。すべてを美しいとのみ込むこと、毒を食らわば皿まで、指先の血管の細胞まで知っている苦しみのことを幸福の直前の普通だと仮定して暮らすこと。

 世界の終わりなんていう言葉が真実に聞こえるのは、世界の終わりが君にとっては死だからだ。世界が終わるってなんだよ、盛衰を繰り返すのは宇宙の摂理、世界の全ては静謐な船の中にある。

 

 神様に縋ってられるなら、いくらだってそうした。でもそこには何一つ見出すことができなくて、砂漠の中で星の王子様でも待とうかと思って、砂漠に行く方法を調べた。遠いモロッコへ。財布も銀行口座も空っぽだから、夢の中で何度も砂漠の闇の中で星を数えた。星座の名前はわからないまま。本の中なら自由だと、何冊も読み切れないのに借りる本、積み重なっていく買った本、まだこれは愛の証だと信じて疑わなかったころの贈り物、幼い頃に常夜灯の下でおままごとの相手だったたくさんのぬいぐるみ。誰の声も通さない音量で流す音楽。独りぼっちは嫌だというのに、自分以外を寄せ付けない世界を作るのが好きだった。

 何でも知ってるわけじゃないのに、誰かに信頼を寄せられることも、なによりもただ周囲の人が怖い。明るくふるまうこと、単純で、敬語が使えなくて、バカで、笑える人だと第一印象で受け取ってもらえますように。

 誰にも救われないままで死のうと思う。早く死にたい、長生きなんてしたくない、こんな風に生きていくつもりなんてなかった。もっとちゃんとまっすぐ、なんの陰りもない人生であるべきだと信じて疑わなかった、自分の人生に価値を見出すことなんてなくて、眩い誰かの光に目を細めるばかりだ。美しくない自分を受け入れたくないと思っているわけではないのに、そう思われるのが悔しい。ただ、自身の虚が広がっていくのがわかるから、いつかこれにのみ込まれるんだろうと思っている。あこがれの人は私が生まれる前に死んでしまったし、会いたくてたまらなかった人も炎の中に消えてしまった。キラキラした世界だったはずなのに、どんどんと光が奪われていくから、この両目を誰かえぐり取ってくれたらいいのにと思っている。いっそ何も見えないように目隠しをしてよ。抱きしめてくれるのは死だけだ、と思う。でも自殺するような勇気はなかった、眠るように死にたいと思いながら、どこかで死ぬのは怖いと思っている。いっそ神様を信じることができたらよかったのに、死の先が決まっている誰かがうらやましい、死の先に見える無をどうやっても受け入れたくないままだから。

 

 こんなに胸が痛いのを、誰かのせいだって言えないし、誰のせいでもないよと言えるほど強くもなかった。誰を信じたらいいのと言いながら、自己開示して、失敗して、もっと疑心暗鬼になって、何もうまくいかないんだ。ほら、こうやって書いた文章を、いったいどうしたいんだろう、これを読んだ誰かに優しくされたいなんて、思っていたりするのかな、あの子じゃなくて、私が死んじゃったらよかったのに。

 

 世界中の煌きを輪にして、星の飾りにした。キラキラ、光る、お空の星よ。

棘に毒

 本当に苦しい時こそ助けてとは言えなくて、それでも話を聞いてほしいから連絡を取ってみたりする。そんな遠回しなことばかりするから、誰にも気づかれないし、そうやって求めた相手は別に自分のことを特別に思っていないから優先されることはもちろんない。当たり前のことで、もう既に知ってることだから、いつも適当に連絡する。自分が傷つくというリスクを背負いたくないのに他人に助けてほしいなんて、酷く自分勝手な奴だな、と書いていて思う。

 これを読んだからって突然優しくなられても困る。期待してしまうから、そんな甘いことはしないでほしい。自分の孤独感や虚無感も、苦しさも何もかも、ほとんどが信頼や自信でしか埋まらないと知っているから。チョコレートじゃ壁の穴は埋まらないでしょう、僕たちは既に、その真理を知っている。こんなことをここに書けるのは、当の本人にはきっとこんな暗がりの奥にある文章なんて読まないから。そう、でも、もしこの文章に辿り着いてしまったとしたら、僕はきっと、連絡を二度としないようにするだろう。君の自惚れの餌になりたくはないし、そんなことが起きてしまったら本当に誰にも連絡を取れない気すらする。

 

 本当の幸福な物語は、君が守られる話の中で、僕が君のために死ぬことだ。もしくは君の知らない間に君の知らない僕が死んでしまうこと。2人組を作る時、1番最初に僕の名前を呼ぶ人がいないことに慣れて、悲しくなることは無くなった。自分が誰の特別でも無いという確信がある。何百何千回と試し行動をしてもそれは変わらなかった。砂漠に水をやるようなものだから、いつのまにか周りにいた人は消えてしまった。花が咲かないから、花の咲かない苗は手放せばいい。納得する、そうだ、花が咲かないんだから君がそばにいなくて当然だ、と本当に受け止めてしまえる。僕の良いところはそこで、そしてそれでもまだ縋ろうとするところは僕の非常に悪いところだ。

 君には君の人生があるから、優先するものが違うから、こういう結末になるのは当たり前のことだし、それをどうこうしたいとは思わないから、それはそれで薄情な奴なのだと思う。

 

 ようやく、やっと、あの子が恋をよくする理由がなんとなくわかった気がした。

もし僕が恋愛をするなら、それはきっと、本当に大切にされていると錯覚できるからだ。体温に救われてしまえるからだ。まるで本当に自分のことを愛しているかのように感じてしまえる。虚が満たされるような気分になる。その瞬間だけは、自分の価値を信じても許される気分になるからだ。手が触れた時、自分とは違う体温を持つ誰かが、自分を愛してくれていると信じられる気がするからだ。一番の味方で、特別で、そういう肩書きを得ることができると期待してしまえる。その空白が生まれる。

 同時に生まれるその期待や安心の数倍以上の不信や不安に蝕まれながら、満ち欠けを繰り返す。気づいてしまっていたとしても、そこから目を逸らし続けるだろう。僕が見つめるべきは自分自身であって、僕に必要なのは恋人じゃなくて、精神科医心療内科医だ。どこまでも、それだけが真実だ。

 

抱えた言葉は全て飲み込んで、明るくて眩い感情ばかりを集めてポリスチレンを着色する。僕の花は咲いているんだ、咲かなかったわけじゃない、咲く花の種類が違うだけだ。

 

あのね、この花の棘には毒があるから。君はもうこれ以上その棘に触れちゃダメだ。

 

 

掠れ声、半分にも満たない

 二年前から書いているのに最後までたどり着かない。
 最後まで往ける気もしない。

 ボールペンのインクが掠れるのは0.38だからじゃなくて、僕が右利きじゃないから。

 掠れたインクで書いた言葉は惨めで、きっとそれはあなたは知らないままでいる。


「ポエマーだね」という言葉に苦しみの味ばかり押し込めたから、私は詩を綴るたびに死にそうになる。私の身体の中にある全部、めちゃくちゃに踏み荒らされて、でも家の中が酷くても、家の外はそのままだから、笑ってしまえば全部何とかなる。
 他人のせいだなんて思わないけれど、あの人はその言葉にどれだけ私が憎しみを抱いたかは、きっと知らない。知らなくてもいいよ、あの人は私と同じような人生を歩むわけでもないから。この言葉ですらあやふやで、私の本音なんてどこにもないかもしれない。

 掠れ声で会話をすることがないように、クラウンとしての役割を果たそうと思って、ずっとなんとなく生きている。本質がどうかなんて誰も興味がないことで、結局のところそれこそ、家の外見と窓から少し見えるリビングや庭や車だけを見る。なのに、だから大丈夫だって言えない、どうせできないから。私の家はボロボロだから、誰だって見ようとすれば見えてしまえる。だからお願いだから誰も私の家に上がろうとしないで、誰もその奥を暴こうとしないで欲しい。

 半分にも満たない本を誰にも読ませたくはない、インクの掠れた文字をなぞるのは私だけでいい。

あまりにも深い昼

 太陽の光の中にいるときこそ、いつよりもずっと孤独に感じることがある。本当に自分だけ、ひとりっきりみたいだ、とか、太陽は羨ましいあの子みたいだ、とか思ったこともあるけれど、それだけが理由じゃないはず。

 いつかできる恋人の話をする君がキラキラしてみえる。私はいつだって笑うしかないのに、君は幸せそうで羨ましい。羨ましいのかな、それもわからない。

 

 会ったこともない人の死についての感情が、突然身体から溢れて泣きたくなることがある、というと本当に変人だと思われそうで困る。みんなそうでしょう?あんなに苦しいことってないじゃないか。この世界でその声はもう現実に存在しないんだとか、あの人の体温はもうずっと前に失われてしまっただとか、そういうことに耐えられなくなる。なのに自分がここで生きてこんな感情を抱いていることの歪さや気持ち悪さも同時にわかっていてむなしくなる。

 

 昼、カーテンから漏れ出る光とスマホとパソコンの光だけを頼りに生きているとき、まるでカーテンの向こうの存在なんてどうでもよくなる。助けてほしいは嘘っぱちだ、本当は救われることがないことを知っている。自分ひとりで立ち上がることが必要だ、とずっと知っている。誰かを頼れるのは赦しを得ている人だけだ。罪人はその罪を贖い続けるしかない、だれも手を差し伸べない、そういうもので、そういう世界だ。ずっとそう思っている。

 ありがとう、楽しかったは、99%うそ。口から溢れる言葉は常に悪いこと。考えていることはいつだって排他的で自己中心的。偉そうに誰かの文句を言うけれど、自分がちゃんとしているわけではずっとない。

 頑張ろう、頑張らなきゃ、ああ死にたいなをずっと繰り返して、星にもなれないからボイジャーを追いかけたい。永遠に追いつけないとしっていてそれでもあのディスクを抱いて、独りぼっちで宇宙をさまよっていたい。どうせここにいても彷徨って間違ってなにもできなくて、焦ってもっとわからなくなって、そうやってひとりで生きていくしかない。

 君という存在ができたことが一度だってないよ、ずっと誰かを疑って生きている。本当に信頼するなんてこの人生じゃ一回もできずに終わっちゃうんだろうなと思っている。本当に死んでしまえるなら早く死んでしまいたい。自分に価値を見出すことをしないと誰も助けられない世界がムカつく。この命に価値なんてないのに、本当にどこにだって意義も美しさもその意味もないままでただここにあるだけで、ただここにあるだけで価値があるって?こんなにも醜くて愚かでなんの意味もなさない言葉を綴ることでしか自分の呼吸を整えられないのに?やらなくちゃいけないこともできないで、何が夢を追いかけるだよ、馬鹿じゃねぇのと思ってる。研鑽も精進もない自分が、何を追いかけるって?何、希望なんて、未来なんて口にしてるんだろうって思う。
 自分が理想を追いかけるだけの意思を持たないということにもかなり前から気づいていて、そんな自分のことを変えられもしないから嫌いだ。ああ、そうだな、基本的に自分は自分自身が嫌い。生まれたことを憎くは思わないけれど、いまだに生きながらえていることには苛立っている。じっと鏡の前で見つめたときに見える虹彩の色すらも憎い。全てが終わればいいのにと思う。私は素晴らしい人間なんかじゃないのに、誰かと関われるのだろうかと思う。

 社会になじむために捨てたことなんていくらだってあるのに、まだ馴化できていない気がして気持ち悪い。ずっと疎外感がある。サブアカウントをフォローしあったって孤独が消えるわけじゃないでしょう。いくつアカウントを作ったって、ふとした瞬間に大きな波として襲ってくる孤独感や不信感は拭えなかったでしょう。恋愛をしようってそんなに簡単にできるわけもなくて、だってどんどん不安になる。誰にも愛されていない気がする、見栄を張っていないと頼りがいのある人だと思ってもらえないと相手にとって有益じゃないと、そうやって恋愛じゃなくてプレゼンテーションになるのは目に見えている。頼ってしまうと都合がよく見えるでしょう。どこまでを見せたら信頼してもらえるんだろうと思う。どんな頼り方が正解なのかなんて知らないからまた疎遠になる。きっとあの人は時々僕を思い出して苦虫を嚙み潰したような顔をするだろう。そういう関係しか築けなかったから。だから他人を大切にできない、家族を大切にもできない。
 居場所がないのは自分が原因だ。かみさまを頼れないのも僕がかみさまを信じられないからだ。あの子に全てを言わなかったのは正しい。あの子は僕の本性をしったら軽蔑するだろうから。知識だけが味方だと知っているのに、その知識すら大切にできない。どこに行けば誰にも気づかれずにうつくしい人間のフリができるのだろう。

 暗がりの中、李徴が李徴だと気づいてもらえていてうらやましかった。昼の方が時間が過ぎるのが遅くて嫌いだ。李徴じゃなくて僕が虎になりたかった。臆病な自尊心、尊大な羞恥心とは僕のためにある言葉だと信じて疑わない。僕も虎になりたい、なれないと知っているのに、なりたいと呟いている。

 

 どこまでも君のいない昼を泳ぐことに慣れてしまいそうだ。君はどこにもいない。誰でもない、誰にもなれないのに。星の見えない昼にどこに向かえばいいのかわからない。

梦想

1週間のうち、全ての体力をきちんと使えるのはたったの2日とか、そのくらいで。多分他の人よりも随分と堕落した生活なのだろうとも思う。

 週2フルパワーの話をすると、「効率が悪い」とか「それじゃダメだ」と言われる。僕が天才だったら誰の言葉も自分で選別して聞けるのに、僕は天才じゃないから口を噤んで「ごめんね、そうだねその通りだ」と言う。

 先週は頑張れたけど、今週は無理だった、昨日はできたけど今日はダメだった、朝は元気だったけど夜はずっとしんどい、とか、そういう波の中で必死に泳いできたけど、周りの人たちはそうじゃないみたいに生きていて、少しだけ羨ましいなと思った。でもきっとみんなどこかで溺れそうになっているはずで、そういうことを口にしないだけなんだ、とも思う。僕は口からすぐにこぼれてしまう。辛いとか、無理とか、死んだほうがマシとか。本当に落ちているときには、誰にも連絡できないのに。あーあ、親友がいる人たちがすごく羨ましい。いつもそう思う。

 自分のケアができる人が羨ましい、僕は噛み癖のせいで爪がボロボロで、バイト先のお客さんに「女の子なのに爪がボロボロなんてダメだよ、モテないよ」なんて言われて、悔しくて帰り道にコンクリの壁を殴って怪我して、また噛んで、爪が伸びたことなんてほとんどない。

 手が綺麗だと言われるのに腕にも手の甲にもケロイドがあって、爪はいつもガタガタで、本当はみんなこんな汚い手のことを誉めたくなんてないのに、そこしかないから、褒めてるんだろう、とか。

 爪噛みが自傷行為だって言う誰かさん達はよほど上手いセルフケアができるんだろうなと思って、そんなこともないのにね、と自分で訂正する。繰り返して、繰り返して、ああ、こんな人生で、一体何をしたいとか言うんだろう、自分は。と思う。

 

 相手に見下されるのは嫌いで、甘やかされるのは好きだった。他人への純粋な信頼や友愛を勝手に履き違えられて踏み躙られることに慣れていなくて、ひとりでボロボロになった人形を抱きしめる夢を見る。でも、自分も過去は加害者だったから、許さなくちゃいけない、とも思う。きっと今だって加害者のままなんだから。

 ねぇ、君に傷つけられたくないから黙っていたのに暴かれてしまったせいでお互いに言葉がうまく出なくなってしまった。君は何も言わないで去ればいいと思っているかもしれないけれど、ずっと傷ついたままで傷口が大きく開くときが今もあるよ、と言いたくなる。

 

 この前、もうこの世にはいないはずの人が夢に出てきて、必死で追いかけたのに追いつかなくて、音も光も全て消えて目が覚めた。忘れられない夢が増えた。会ったこともないのに、その人みたいに夢を追いかけて輝ける人になりたかった。

 

でも、ああ、もう無理だ、と思っている。

 

「〇〇だからできない」は言い訳でしかない、と言った誰かは、本当に全て言い訳に聞こえていたんだろうか。本当にできないんだよ、社会が変わんないの、きっと君のほうが特権が多いんだよ、と言えなかった、その時も黙った。言い出してしまったことを後悔して、夜ひとりで泣いた。ねぇ、本当に言い訳だと思う?ああ、そういえばその時も君は、どこか見下したような話し方をしていたね。傷ついたことは無かったことにして、全て埋めて、メッセージを送っても返信はなくて、ああ、本当に「どうでもいいんだろうな」と思った。

 

能力主義だけが正義だと思う?成果至上主義でいいと思う?それで全てが解決すると?君は努力すればちゃんと結果が伴われると思ってる?

 

なんでいえないんだろうね、言えなかった言葉をメモにコピペして、どんどん増えていくそれを眺めたこともある。いえなかった言葉は、君のプライドを傷つけるもので、踏み込みたく無かったから、傷つけられたく無かったから黙ったのを思い出す。

 

被害者ヅラするな、と言われたことがある、悪いのは僕で、それは僕の押し付けでしかない、多様性を奪う、多様性を掲げただけの声だ、とか。その通りかもしれないけれど、言わないでいるよりはマシだって声を出したら笑いながら黙らせられたようで、なんだかどうしていいかわからなくて、ああ、死んだほうがいいな、と思う。とりあえず笑って全部無かったようにして笑い話に無理やり変えるだけだ。

 

世界は強い人だけで回ってるわけじゃないのに。

 

2023.05.08 01:01