とびきりの煌きを輪にして

 自分はどう生きても素晴らしくなんてなれないと知っていること、永遠にしがらみの中で自己嫌悪と他者羨望の音ばかり耳にして、美しいものを見た気になって生きていく。目の中にある色水が虹を見えないようにしている。空の色も海の色も、君の虹彩の色も知らないでいる。すべてを美しいとのみ込むこと、毒を食らわば皿まで、指先の血管の細胞まで知っている苦しみのことを幸福の直前の普通だと仮定して暮らすこと。

 世界の終わりなんていう言葉が真実に聞こえるのは、世界の終わりが君にとっては死だからだ。世界が終わるってなんだよ、盛衰を繰り返すのは宇宙の摂理、世界の全ては静謐な船の中にある。

 

 神様に縋ってられるなら、いくらだってそうした。でもそこには何一つ見出すことができなくて、砂漠の中で星の王子様でも待とうかと思って、砂漠に行く方法を調べた。遠いモロッコへ。財布も銀行口座も空っぽだから、夢の中で何度も砂漠の闇の中で星を数えた。星座の名前はわからないまま。本の中なら自由だと、何冊も読み切れないのに借りる本、積み重なっていく買った本、まだこれは愛の証だと信じて疑わなかったころの贈り物、幼い頃に常夜灯の下でおままごとの相手だったたくさんのぬいぐるみ。誰の声も通さない音量で流す音楽。独りぼっちは嫌だというのに、自分以外を寄せ付けない世界を作るのが好きだった。

 何でも知ってるわけじゃないのに、誰かに信頼を寄せられることも、なによりもただ周囲の人が怖い。明るくふるまうこと、単純で、敬語が使えなくて、バカで、笑える人だと第一印象で受け取ってもらえますように。

 誰にも救われないままで死のうと思う。早く死にたい、長生きなんてしたくない、こんな風に生きていくつもりなんてなかった。もっとちゃんとまっすぐ、なんの陰りもない人生であるべきだと信じて疑わなかった、自分の人生に価値を見出すことなんてなくて、眩い誰かの光に目を細めるばかりだ。美しくない自分を受け入れたくないと思っているわけではないのに、そう思われるのが悔しい。ただ、自身の虚が広がっていくのがわかるから、いつかこれにのみ込まれるんだろうと思っている。あこがれの人は私が生まれる前に死んでしまったし、会いたくてたまらなかった人も炎の中に消えてしまった。キラキラした世界だったはずなのに、どんどんと光が奪われていくから、この両目を誰かえぐり取ってくれたらいいのにと思っている。いっそ何も見えないように目隠しをしてよ。抱きしめてくれるのは死だけだ、と思う。でも自殺するような勇気はなかった、眠るように死にたいと思いながら、どこかで死ぬのは怖いと思っている。いっそ神様を信じることができたらよかったのに、死の先が決まっている誰かがうらやましい、死の先に見える無をどうやっても受け入れたくないままだから。

 

 こんなに胸が痛いのを、誰かのせいだって言えないし、誰のせいでもないよと言えるほど強くもなかった。誰を信じたらいいのと言いながら、自己開示して、失敗して、もっと疑心暗鬼になって、何もうまくいかないんだ。ほら、こうやって書いた文章を、いったいどうしたいんだろう、これを読んだ誰かに優しくされたいなんて、思っていたりするのかな、あの子じゃなくて、私が死んじゃったらよかったのに。

 

 世界中の煌きを輪にして、星の飾りにした。キラキラ、光る、お空の星よ。