どこにあるのかわからない

 蘇ることのない愛があるのかもしれない。縋り続けることをまるで悪いことのように言わないでくれとは言えないけれど、それでもどうか愛してくれと願っては近づこうとする私は惨めで卑怯な奴なのだろうか、あの人に大切にしてほしいと願うのはそんなにも烏滸がましいことなのだろうか、私の味方でいてとお願いするのは馬鹿馬鹿しいことなのだろうか、私はどこに行きたくて、どうしてこんなに悲しいのだろう。心は脳にあるのか心臓にあるのか、どこにあるのかわからない。

 帰り道に私のことを一度でも抱きしめてくれたらよかったのに、私の味方で永遠にいると誓ってくれたらよかったのに、ずっと家族だからと言って欲しかった。この悲しさは脳にあるのだろうか、それとも心臓にこびりついて血が巡るたびにその破片が刺さるからこんなに苦しいのだろうか。最後の最後まで、私のことを愛していたのかわからないままで5年が過ぎること、6年前に私が願ったのは私のことを抱きしめて、私の味方だからと言ってくれることだった。学校に行かない私を疎むんじゃなくて、私が行けない理由を一緒に探して欲しかった。時々どこかに群れて行って欲しかった、義務みたいに温泉に連れて行って欲しかったわけじゃなかった、ただ高いものを買って欲しかったわけじゃなかった。ただ、何もかもよくわからなくて身体中に線を作っていたことにもっと早く気づいて、どこかに連れて行って欲しかった。先生も誰も彼も分からなくて憎くて馬鹿馬鹿しくて自分が惨めで価値をどこにも見出せない自分を許したかった。許して欲しかった。守って欲しかった、私にもよく分からないなにかから。

 

この感情は脳からなのかそれとも心臓なのか、はたまた細胞の微かな部分なのか、どこにあるのかなんてわからないけれど。

 

2023/07/11 0:48